生徒を夢中にさせる問題解決学習
第13回
修学旅行学習 (後半)
hanamaru形式で、やってみよう!
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高橋りう司
(NPO法人日本未来問題解決
プログラム)
NO.13 2008.6
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少しマンネリかもしれない修学旅行。準備そして世話、先生の負担を活かしたい修学旅行。ということで、「生徒が夢中になる問題解決学習」を活用した、修学旅行学習の提案を行っています。
●提案する修学旅行に関する学習フロー
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心と頭の準備を行う「百聞」の事前学習
「問題文に落とし込み・列挙」→「フィールドワーク文」作成
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修学旅行
「一見」して膨らまし、ピンポイント情報収集
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「問題解決文」「問題解決アイディア」を
まとめる事後学習と発表
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鞆の浦の修学旅行に加わった、A君(中3)の場合で見ましょう。
A君は、「国や地域の方針決定は、行政が"高い次元から"決めて、市民はついていく形が多い。しかし、日本の方向としては、地方自治、住民の主体性を発揮するものにならなければならないと、誰しもが考えている。「町の将来のあり方に市民の声は反映されているか」「文化遺産を保護することは大事だが、住民の生活もある。多くの市民が納得し、ついていける文化遺産の保護の考え方がわからない」などの問題を感じました。
A君はそれらの中から、修学旅行で観察の中心とするフィールドワーク文を
「20年以上にわたって、@とAの間で論争が行われ、暗礁に乗り上げている。
@鞆の景観をそのまま保存する意見
A鞆に道路と駐車場をつくり、生活と観光業などの改善・支援を願う案
歴史遺産と人々のつきあいはどの地域にもある問題だ。歴史遺産保護の
決定はどういうのが良いか、自分の考えをまとめる」と決めました。
A君のフィールドワーク文の問題意識は、歴史遺産の本質の1つをよく気づいたものです。修学旅行で、観察し、インタビューし、収穫したことはメモに次のように書かれていました(一部)。
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(メモ)
−鞆の浦について見たこと
●灯台である「常夜燈」や階段状の船着場である「雁木」など、港の必要施設が揃っていた。港のセットが完全に残っている例はほとんどないようだ。
●鞆の地元の多くの人が鞆の歴史に愛着をもっていると感じられた。しかし、規模的にはこじんまりしたものなので、鞆がユネスコから世界的な歴史遺産として認められるという感じがぴんとこないのではないかと思った。
●道路は一車線のところが多く、地元の生活環境の改善をしてほしいと言われている。
●鞆をそのまま保存しようと考える市民グループ(今回、埋め立ての差し止めを要請した)は、生活問題に対しては、山側にトンネルを掘る代案を提出している。
●市長さんをはじめ県側の埋め立てのアクションに対して、市民グループが差し止めの訴えを起こした。
●観光産業、漁業の成績は、あまりよくないようだ。
−文化遺産の保護の考え方
●文化遺産の保護の大御所はユネスコだ。世界遺産条約に日本も加盟している。条約は「世界中の価値の高い文化遺産を人類共通のたからものとして守り、次世代に伝えていくことの大切さを唱えている。」
●保護の考え方は、「建築基準法」のような当たり前のものから、保護の一部のお金を支援する「文化財保護法」、ばらばらの建設をやめさせ、よい景観を残すための「景観法」などがある。
●「景観法」に従った行政を行う市町村は200くらいだ。制限を受けるために、景観法行政団体に加わらない市町村が多いようだ。
●歴史遺産として認められるのは大変なようだ。その遺産の相対的な価値(本当の専門家でも分からないくらい難しい)に加えて、遺産として保存を進めたい人々の広報努力の結果として決まるもので、そこには熾烈な競争がある。以下略
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◆出題2 修学旅行から事後学習へ
修学旅行から帰り、あなたの企画したトピックに関して、体験内容をまとめて発表してください。
修学旅行から帰ったA君のまとめは、簡潔なものです。見てみましょう。
(1)問題解決文
「鞆を1つの例とし、さらに一般的に、歴史遺産の保護の決定の仕方を考える」
(2)歴史遺産の決定のやり方
A君は、5つの解決策を考えました。
@保護に対する態度は、生活がかかっている住民が決める。
決する方法は、その自治体で話し合いを行うことが基本である。それでも決することができない場合で、保護・保存がその住民の生活に与える影響が大きいときは、正式な住民投票にかけるとよい。
A保護に対する態度は、市長が決める。
住民の生活は歴史遺産の保護だけではない。生活全体のためにあるのが、市長さんだ。住人からさまざまなことを直接任されている市長さんが、住民の意見を聞いた上で決するとよい。
B保護に対する態度は、有識者や関心のある人が決める。
保護は住む市民だけの問題でなく、県民、日本国民、そして世界の関心を持つ人々にも関係する。保護については関心を持つ人が委員会を立ち上げ、広くメンバーを集める。また別の主張の人も別に委員会を立ち上げる。各委員会は保存策を自治体のトップにアピールする。自治体のトップは、メンバーの数の多い委員会の意見を聞くことになるだろう。
C保護に対する態度は、裁判所が決める。
「何が正しい判断か」というのは、実際は難しい。
今後、法律がさらに整備されていく必要もあるだろう。現実的には、文化財保護法、景観法などの現在の法律、トラスト運動の活用など、存在するものを総動員して、活動し、訴訟し、一番説得力のあった者が、自分たちの保存の主張を通すことができる
。
D保護に対する態度は、経済性が決める。
歴史遺産の保護がぶつかる相手は経済だ。住民の生活と遺産の保護の調和点を見出す必要があり、遺産の具体的な活用プランのできが決め手となる。民営化・商業化プラス、ユネスコや日本政府からの助成金のトータルで経済性がなければならない。
A君は、はじめ5つの中から、どれがもっとも良いかを自分で選ぶつもりでしたが、案を具体化するときの難しさに直面し、まとめをここまでとしています。
世の中には決まらないことが多くあります。中央・地方の政府の信頼が低下し、市民の自治や責任を考える本格的な時代に入ったととらえると良いかもしれません。たとえば、産業界の力が強い場合があります。それから、反鯨活動のように極端な歴史主義者・環境主義者もいて、混乱もあります。そういう地域の切実な問題を考えた行旅君の修学旅行は、以下の2点によって、「意思決定」についての関心を深めることができたように思います。
●自分の関心事にもとづいていること
●事前の勉強からまとめの学習成果を、「フィールドワーク文」
「問題解決文」の形で焦点を定めて絞って書いていること
| ◆ユネスコは、世界遺産の保存・選定・活用について、以下のように述べています。「人類が共有すべき普遍的な価値。それらは、私たちに多くのことを語る。世界遺産の選定は、次の世代に大切なものを継いでいこうという私たちへのレッスン。たんに保存されるだけでなく、多くの人びとが訪れて親しむことが求められ、同時に破壊が行われないように注意する必要がある。個性ある町づくりという意味でも、地域にある自然や文化の蓄積財産を大切に活かしたい」 |
私たちはいくつかの修学旅行学習の教材を用意しています。「文化財の保護費用」「地方ローカル線の経営の苦境」に関する事前資料などです。
hanamaruの事務局にお申し込みいただければメールでお送りできます(お名前、学校名、メールアドレスをお知らせください)。hanamaru@djn.co.jp
また修学旅行をより楽しくする「問題解決学習」活用をやっていきたい先生方と、一緒に研究を行うことができればよいだろうなと思っています。
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