生徒を夢中にさせる問題解決学習
15回(最終回)
問題解決学習による教育改革のすすめ
|
高橋りう司
(NPO法人日本未来問題解決
プログラム)
NO.15 2008.10
|
生徒たちがやる気になり、教育効果を高くできる、問題解決の授業を提案 して
きました。
小中高の教育に何がもっと付加されていくべきか、まとめをしたいと思います。
***************
<ビル・ゲイツの少年・青年期>
ビル・ゲイツの事例を見てみましょう。
●21世紀の情報社会に備えようと、コンピュータ授業を準備したシアトルの中
学で、55年生まれの13歳のビルは、後にマイクロソフトを共同設立したポー
ル・アレンとコ ンピュータを楽しんだ。
●中学の同窓生の父が経営する、コンピュータソフト会社が、ソフトのテスター
の機会を二人に与えてくれた。
●16歳のときに、ポール・アレンとコンピュータソフトのビジネスを始めた。
●コンピュータ使用料が高く、安く使いたいと思う中小会社が多くあった1974
年、MITS社が超安価の「コンピュータの組み立てキット」を発表。投入でき
るソフトを募集する同社にポール・アレン自作のBASICソフトを持ち込む。
●BASICがMITS社から認められ、8000万円で買い取ってもらえた。この資金
をもとに、マイクロソフト社を設立した。ビルの19歳のとき。
●1978年、新しいパソコンを開発しようとしていたIBMの社員が、CPMという
OSの開発企業Digital Research社にOS開発委託をしようとしたが断られ
た。
●IBMは、CPMを使ったシミュレータの販売をしていたマイクロソフトと相談し
た。CPMの類似OSであるSPC採用に方針を変更し、マイクロソフトの手
で改造してIBMの新型マシンにあうようにという仕事をもらった。これがMSD
OSである。
ビルは、少ない知識(だから状況理解もつたない)を使って、商品を開発・販売し、直面したビジネスの課題にこたえていきます。一山を乗り越えると、知識が拡大していました。前進した、IT業界の理解、構造図の把握をもとにして、自分たちの仕事の目標を描きなおします。もっともっと大きなビジネス目標をゲットします。知識、開発、目標が連続的につながっています。ほんわかした夢を見ているのではなく、目の前の課題に取り組みながら、現実の目標をドンドン先に先に広げていきます。
ビルの軌跡を見ると、人の普通の発展の道筋を見ていると思います。こうできれば良いし、これの他には発展の道筋はないと思います。
***************
<経済同友会の「小中高徐々に応用」提言>
07年3月経済同友会『教育の視点から大学を考える』には、経済界の1つの見方があらわされていますが、わたしがここで指摘していることと同じであると思います。
概要は、下記ですが、日本の小学校から大学まで、生徒・学生が、社会の問題に取り組み、経験をつみ、意欲を高められる教育改革を主唱しています。
●教育改革がたびたび行われているが、その思想には変化がない。
●既存の解が存在しない時代になり、新しい教育で期待するのは、
倫理観、志、熱意、課題発見・解決力、問題解決の方法論、協働、批
判力、国際性、個性
●大学では自ら知を獲得する経験をさせたい。ただし、大教室の講義中心の
受身教育が実態だ。
●大学は、教育改革全体を牽引する役割を負っている。中高は次の段階へ
の進学の準備で忙しく、改革主体にはなりにくいのに対して、大学は行政か
ら独立し、自由な方針実行力を持ち、実社会と接点を持ち、社会の人材
ニーズを汲み取れる立場にあるからだ。
●日本の大学には、教育軽視(研究中心ではなく)の姿勢、教育技術の不
足など、取り組まなければならない課題が多い。
●一方で、大学関係者の懸念は、大学入学者の学力・知識面の問題、そ
してもっと大きな懸念は、大学入学者の、自ら学び、さまざまな経験を積む
ことへの意欲の低さだ。
●受験という制約のある小中高も、教育のあり方を考え直すべきだ。進学に
必要な基礎的な知識・学力の習得は当然だが、当然の基盤面で良いと
せず、知識を活用して正解のない問題に取り組むための訓練も小中高の
段階から少しずつ開始すべきだ。社会人を作ることが教育の目的であるか
ら、社会人となり、進路を選択できるようになること、市民としての責任自
覚、そのための社会の理解の教育を改善しなければならない。
***************
<日本の青年のキャリア問題>
酷い、とよく言われる問題は、会社の採用担当者が唖然とするような学生のレベル問題、就職して何をしたいか分からず、就職先分野を決められないこと、就職してから3年以内に30%の青年が離職することなどです。
富山高校の教師助手をつとめたアメリカ青年(わたしたちがEQ教育に関して交流するヌエバ・スクールの卒業生)が言っていました。クラスの高校生が進路(進学)先を決めて行く時期だったのでしょう。弁護士希望という高校生もいました。「なぜ?と聞いたら、成績が良いから、との答えに驚いた。日本の子は職業的に何をやりたいとキチンとした目標を描いていない。」
「ストリートミュージシャンになりたい」という若い人の希望をよく耳にします。地方から目指して東京に来ている若者をたくさん見ています。知識(この場合であれば、ストリートミュージシャンの関連知識で、月に得られる平均的収入の見通し、ストリートからステージに昇進できる可能性、昇進する手順知識、こうやって数年、年齢が加わったときの、自分のキャリアづくりへの影響など)がないなと思います。目標が幼いです。「弁護士希望」と似ていると思います。
青年が会社に入ってから3年以内に30%は辞めていることも、よく理解できます。それは、会社に関する状況理解ができていなかったこと、自分の目標が不確かであったことと関係していると思います。
キャリア問題ではないですが、日本人ビジネスマンの評価の低さも書いておくべきでしょう。ビジネスマンの応用能力の不足のことです。
会社は、前例に従った仕事が多いものです。だからアルバイトにもっと任せられるということで、非正社員を活用してきたと思います。そして会社の求めるものも少しずつ変わっています。社員でやっていくには、体力か、応用力が求められます。応用力の中心は、ビジネスを発展させる課題解決力で、お客に対して提案をおこない、喜ばれてお金をいただけるような力量がほしいです。そのためには、お客の課題を理解しなければなりませんし、それには情報をとりにいく力がもっとも大事です。大学教育が、そして小中高教育が教育内容を再考する大きなポイントです。
***************
<教育改革必然。何を変えるのか>
ビル・ゲイツの物語と日本の少なくない青年の問題は、とても日本の教育の問題をあらわしていると思っています。まさに教育改革必然! どの方向に変わるべきか、要約を書いておきたいと思います。
●挑戦−得られる体験的知識−人生の目標がハッキリしていく、というサイ
クルが働かないと、人材の成長はないだろう。急に始まるものではないか
ら、小学生から挑戦する機会を家庭と学校で研究してあげよう
●逆のサイクル(基礎知識ばかりを覚える−試験で答案を書く−これ以外は
やらない)に対する心配を社会で共有しよう
●社会的問題を解決する必要性を教え、命令された学習ではない、楽しい・
自分のための学習にめざめさせよう。
●先生が問いを立て、与えられた問いに答えるのは、ごく一局面でしかなく、
教育の本質は、社会や理科の中に、自分の問い・仮説を発して行くこと
だと分からせよう。
●正解がある問題はトレーニング問題なのであり、本当には、社会の多くの
問題にはいくつもの答えがあることを分からせ、アイディアの大切さを理解
できるようにしてあげよう。
●知識のあるなしが、効果的なアイディア発想を左右することを経験させ、
知識を欲しいと思う体験をさせよう。また、自分も知識をつくる人間の仲
間であることを自覚させる。
●自分が動かないと始まらないものを周りに配置しよう。先生が講義してく
れ、聞いていれば、ノートをとればよいという環境を少しずつ減らし、知識
は自分でとりにいかなければどうにもならないという方向に導く。
●理科の発明の大元に社会的ニーズを感ずることがあるわけで、もっと社会
科を大事にしよう。知識理解を確認する社会科をもとに、社会や社会的
問題のダイナミックな動きを分析できる「どうして」の社会科の力をつけてい
ってあげよう。
|